カスタムメイド

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ロシアンセーブルのWフェイスのコートをご注文いただきました。裏地が無いセーブルのコートです。クリステンセンなど、欧米のトップブランドが手掛けているアイテムです。

以前、お世話になっていて尊敬するある会社の専務さんと部長さんにそのコートを見せていただいたことがあります。シルバリーのWフェイスで、美しく、比類のない軽い着心地の素晴らしいコートでした。

Wフェイスのコートは海外で何着か見たことがありますが、今まで見た中で最も素晴らしいコートの一つでした。縫製はデンマークですが、皮の加工は恐らくイタリアだと思われます。イタリアの皮の加工技術は流石の一言です。「国内で同じようなコートを作ってみたいので、もう一度見せて欲しい」とお願いしましたところ「是非、頑張ってみなさい」と快諾下さり、数時間、眺めていました。

通常、セーブルのコートを作るためには、数倍の数の原皮からソーイングしなければなりません。色、毛質、ボリューム、大きさ、キャラクターの入り具合など揃えなければなりません。通常のコートは裏地がありますので、傷取りが出来る程度の小さな傷の皮は使用できます。それでも例えば40枚使いの綺麗なコートを仕上げるためには数百枚からソーイングしなければなりません。Wフェイスの場合、裏が全て見えてしまい、しかもセミレッタさえもしませんので、傷のある皮は使用できません。そのため通常のコート以上の厳しいソーイングが必要になります。

今回は、染色、ナッパ加工など、お世話になっている諸先輩に事情を説明し、協力を仰ぎ、全て日本国内で製作することに致しました。デザインを相談させていただき、パターンを引いて、トアルを組み、ご試着と修正を重ねました。型紙と原皮のサイズを確認、採寸し、40枚は必要と判断し、数百枚から50枚をソーイングすることにしました。なぜ10枚余分にソーイングしたかは後程説明させていただきます。数百枚の原皮は1年では調達できません。そのため、2年かけて調達した原皮からソーイングしたのですが、2年前のものと今年のものとでは状態が異なります。同じコンディションにするため、再鞣しを施しました。それを、染色し、仕上がったものを水ばりし、半加工品の状態に縫製しました。その状態のものに透明ナッパを施してもらいました。そして仕上げたのが写真のコートです。まだ、ボタンは付いていません。糸の目印の部分に後程、納得出来るボタンを取り付けます。

今回の作業で痛感したことがあります。高度な縫製技術は勿論ですが、鞣し、染色、ナッパ加工など、毛皮の加工を陰で支える技術者の卓越した技術と、設備が不可欠だということです。残念なことに、鞣しも染色もナッパ加工も、営業されている会社は数社のみという状況です。幸い、どの会社も高い技術を継承されているため、今現在はなんとかなりますが、どこか1社が無くなってしまったら、国内での本当の意味での毛皮の製作は出来なくなります。一度無くしたもの、継承が途絶えた技術を取り戻すことは困難です。

国内で毛皮のコートを製作し販売することは、コスト的には非現実的で、場合によっては工賃だけで、香港や中国での仕入れ価格を上回ってしまいます。それでも、毛皮の基本はコートです。国内で作れるうちは作り続けたいと思います。今回も何点か、改善すべき課題が見つかりました。お客様のご厚意に甘えることなく改善して参ります。

余分にソーイングした10枚は、染色やナッパ加工の段階で何かロスが出る可能性も考慮した予備です。勿論、選び抜いた皮をベテランの職人さんが加工したわけですから殆どロスは出ませんでした。実は、余った皮は工房で保管します。何故なら、Wフェイスのコートですから、将来的に万一破れた場合、綺麗に修理が出来ない場合もあります。その時に、ソーイングし加工した同じ皮があれば、お直しが出来ます。それが余分にソーイングした一番の理由です。

納期に一年もかかるコートをオーダーしていただき、気長にお付き合いいただいたお客様と、国内の技術継承というお気持で無理なお願いを採算度外視で承諾して下さった諸先輩方に心から感謝いたします。

カスタムメイドについて

毛皮には1点ごとに個性がございます。
同じ種類でも、サイズ、ボリューム、差毛と綿毛のお色、毛質、状態など全て異なります。
お色やボリュームなどが揃えられれば製作できるアイテムの幅が広がります。また、お色等が揃わない(孤独な)原皮の中にも、単体としては美しいファーもございます。
それぞれの毛皮の基本的特徴、個体としての特性、状態をご説明させていただき、お客様と原皮の出会いの場をご提供できましたら何よりだと考えます。
それぞれの個性を活かし、どなたかに気に入っていただけるアイテムを作ることで、毛皮を無駄なく有効に活用できると考えます。
「ご自分で選んだ原皮で作った拘りのアイテム」は、小さなものでもきっと「宝物のひとつ」になるはずです。

カスタムメイドの場合、費用は原皮の価格と製作費です。完全明瞭会計で、内訳も詳しくご案内させていただきます。
製品の仕入れの様に、売れ残りも想定する必要はありませんので、意外にお手頃な価格です。

原皮をお安いものに変更すれば、単価×枚数分お安くなります。
安い原皮が必ずしも悪い訳ではありません。毛皮は国際商品ですので、価格は変動致しますし、毛皮としては必ずしも良いとは言えないものでも、希少価値という点で高い原皮もございます。お客様のご要望を伺い、大切にお召しいただける1点をご提案致します。

custum-made.1ロシアンセーブルのボレロです。
「高級素材で、パンツスタイルにも合うカジュアルなアイテムを」とのご要望を伺い、カスタムメイドしたアイテムです。